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非動脈硬化性の冠動脈所見と修飾子E

本セクションでは、冠動脈CTでよくみられる非動脈硬化性の冠動脈所見として、心筋ブリッジ、冠動脈の起始・走行異常、冠動脈瘤・冠動脈拡張症などを扱う。CAD-RADS 2.0は、そのリストに挙げる非動脈硬化性所見を修飾子Eで示す。修飾子Eは狭窄のカテゴリーを置き換えず、これに付記する。

要点

  • 心筋ブリッジは部位、深さ、長さで記載する。動脈を覆う心筋が2 mm以上であれば深在型、トンネル長が25 mm以上であれば長いブリッジとする。
  • 単一心位相の撮影では心筋ブリッジの収縮期圧迫を正確に評価できないため、レポートに記載する際はこの限界を考慮する。
  • CAD-RADS 2.0とSCCT 2026のいずれも、修飾子Eの対象リスト(網羅的ではない)に心筋ブリッジを挙げていない。したがって、心筋ブリッジにEを付けるかどうかは解釈による。
  • 異常冠動脈は起始、走行、内腔径、終末部で記載する。高リスクとされるのは動脈間走行であり、壁内走行を伴う場合は特にリスクが高い。
  • 冠動脈瘤は参照血管径の1.5倍を超える拡張で、血管長の半分未満にとどまるものをいう。拡張が血管長の半分を超える場合は冠動脈拡張症と呼ぶ。
  • 修飾子EはN、HRP、I、S、Gの後、コードの末尾に置く。どのセグメントにもプラークがなければ、コードにPは付けない。
このセクションの用語 (8)
  1. 心筋ブリッジ
  2. 心筋ブリッジの深さ・長さ・収縮期圧迫
  3. 冠動脈起始異常
  4. 異常冠動脈の走行
  5. 壁内走行
  6. 起始異常の高リスク解剖
  7. 冠動脈瘤と冠動脈拡張症
  8. 修飾子E(例外)
表 1. 異常冠動脈の走行。SCCT 2026は4つを挙げ、心臓後方走行は単冠動脈に関する報告に基づく。
走行経路文献上のリスクマップでの表示
動脈間走行大動脈基部と肺動脈幹の間高い(特に壁内走行を伴う場合)「動脈間走行」
経中隔走行(肺動脈弁下走行)肺動脈弁の下方、中隔内動脈間走行より低い選択肢なし
肺動脈前走行肺動脈幹の前方概して良性「肺動脈前走行」
大動脈後走行大動脈基部の後方概して良性「大動脈後走行」
心臓後方走行心臓の後方概して良性選択肢なし

出典: SCCT 2026、pp. 20–21(走行の分類、動脈間走行の高リスク、経中隔走行の圧迫が少ないこと);Cheezum 2017、J Am Coll Cardiol、抄録(大半の亜型は良性であり、突然死は動脈間走行と関連する);Sheng 2021(心臓後方走行、概して良性)。

心筋ブリッジ Myocardial bridging MB#

別名: 心筋架橋, 心筋内走行 (トンネル部を指す語で、同義にも用いられる), トンネル冠動脈, 壁在冠動脈 (Angelini分類の「intramural coronary artery」にあたる。本用語集では、壁内走行(異常冠動脈が大動脈壁内を走る区間)との混同を避けるため、見出し語を心筋ブリッジとする) 本用語集では使わない, myocardial bridge (英語)

心外膜冠動脈の一部の区間が心筋内のトンネルを走行する状態であり、その上を覆う心筋束をブリッジと呼ぶ。

記載例

左前下行枝 (LAD) 中間部に心筋ブリッジ。拡張期のみの撮影のため、収縮期圧迫は評価不能。

混同しやすい点: 心筋ブリッジの心筋内走行と異常冠動脈の壁内走行。前者は心筋内のトンネル部、後者は起始部近くの大動脈壁内を走る区間である。

出典: SCCT 2026、本文、非動脈硬化性冠動脈異常(セクションj)、p. 21 · “Myocardial bridging is characterized by encasement of coronary arteries by myocardial fibers, with a tunneled intramyocardial segment and a myocardial bridge that overlies the artery.”

詳細

読影での使い方: LADの曲面再構成(CPR)で同定し、血管短軸像で確認する。短軸像では、トンネル部が心筋に囲まれてみえる。所見には血管名とセグメントを記載し、深さと長さを記述する。収縮期と拡張期の両方を撮影した場合は、収縮期圧迫も記述する。

注意点: トンネル部のみを観察し、その手前(近位側)のセグメントを見落とすこと。Rovera 2023の総説では、プラークは主にブリッジの直前にみられ、トンネル内にはまれである。

他の文献: SCCT 2014は、左主幹部欠損とともに心筋ブリッジを臨床的意義をもちうる解剖学的変異に挙げていた。頻度が高いため、真の異常ではなく変異とみなす著者もいるが、多くの分類は走行異常に含めている。心筋ブリッジが最も多くみられるのは左前下行枝(LAD)、特にその中間部である。 (SCCT 2014、セクション10.6.2、p. 352;Genoud 2026、セクション4.2・4.2.1および表2;Rovera 2023、緒言)

CCTA Mapでは

ブリッジを追加できるのは左前下行枝 (LAD) 中間部のみで、その編集パネルの「心筋ブリッジ」で「ブリッジを追加」を押す。トンネル部にはプラークを置けず、ブリッジはカテゴリーを変えない。マップは慣例としてEを付加する。マップの仕様上の制約:ブリッジは「深在型」、「収縮期圧迫」45%の状態で追加され(「表在型」に切り替えると18%になる)、テンプレートは圧迫を評価していなくても、「約0%」を含めて常にその数値を出力する。「収縮期圧迫は評価不能」と出力されるのはセグメントを評価不能(N)にした場合だけだが、Nを付けると症例は評価不能(N)の扱いとなり、そのセグメントのプラークも消える。単一心位相の撮影ではNを付けず、「✎ 下書きを編集」で数値を「収縮期圧迫は評価不能」という記載に置き換える。また、テンプレートはNの場合を除きトンネル部を「壁内走行」と出力するが、マップは同じ語を「高リスク所見」で異常冠動脈の大動脈壁内の区間に用いている。混同を避けるため、下書きではNの場合のテンプレートと同じ「心筋内走行」に書き換える。 マップで例を開く (CAD-RADS 3/P1/E) →

マップのテンプレート出力(原文のまま)

左前下行枝 (LAD):近位部:非石灰化プラーク、中等度狭窄(50-69%)、同血管の他部位に病変なし。中間部に心筋ブリッジを認め、壁内走行(表在型)および約20%の収縮期圧迫を伴う。分枝 D1、D2:病変なし。

インプレッション 中等度の閉塞性冠動脈疾患。CAD-RADSカテゴリー 3/P1/E。

左前下行枝中間部の心筋ブリッジ(修飾子E、外因性圧迫による非動脈硬化性所見):圧迫は動的(収縮期)であり、CAD-RADS 0-5のカテゴリー分類は変更しない。

閉塞性病変(≥50%):左前下行枝 (LAD)。

心筋ブリッジの深さ・長さ・収縮期圧迫 Myocardial bridge depth, length and systolic compression#

別名: 表在型・深在型心筋ブリッジ, 心筋ブリッジの分類, ミルキング現象, milking effect (侵襲的冠動脈造影でみる収縮期圧迫の所見), 収縮期圧排, ブリッジ長

SCCT 2026は心筋ブリッジを、被覆、深さ、長さ、収縮期圧迫で分類する。被覆は、動脈の75–99%が心筋に囲まれる部分被覆と完全被覆に分かれる。動脈を覆う心筋の厚さが1 mm以上2 mm未満なら表在型、2 mm以上5 mm未満なら深在型、5 mm以上なら非常に深い(very deep)とする。長さは25 mm未満なら短いブリッジ、25 mm以上なら長いブリッジである。収縮期圧迫は、収縮期の内腔狭小化なし、50%未満、50%以上に分ける。

記載例

左前下行枝 (LAD) 中間部に心筋ブリッジ、深在型(被覆心筋の厚さ3 mm)、長いブリッジ(30 mm)、収縮期と拡張期の比較で収縮期圧迫は50%未満。

出典: SCCT 2026、本文、非動脈硬化性冠動脈異常(セクションj)、p. 21 · “superficial (1-2 mm), deep (≥ 2 mm), very deep (≥ 5 mm) and short (<25 mm) or long (≥ 25 mm)”

詳細

読影での使い方: 動脈を覆う心筋の厚さは血管短軸像で、トンネル長は曲面再構成(CPR)で計測する。収縮期圧迫は収縮期と拡張期を比較して評価する。SCCT 2026によれば、ブリッジの厚さ、収縮期狭窄、拡張期狭窄はいずれも独立して症状を予測しうる。なかでも拡張期狭窄は、診断能と有害事象の予測能が最も高い。

注意点: 拡張期の単一心位相しか撮影していないのに、収縮期圧迫の割合を記載すること。SCCT 2026は、単一心位相では解剖学的評価に限界があると注意している。

他の文献: 侵襲的冠動脈造影では、Noble分類がLADの収縮期圧迫を3段階に分ける。グレード1は50%未満、グレード2は50–75%、グレード3は75%超である。冠動脈CTでは、SCCT 2026が収縮期圧迫をなし、50%未満、50%以上に分けている。 (Noble 1976(Xu 2022、方法の項で引用);SCCT 2026、p. 21)

CCTA Mapでは

「深在型」と「表在型」にはmm単位の閾値がなく、非常に深いブリッジの選択肢もないため、計測値とSCCT 2026の分類は下書きに手入力する。「トンネル長」はセグメントのうち描画される割合で、mm単位ではなく、テンプレートにも出力されない。マップの仕様上の制約:テンプレートは、計測していなくても「収縮期圧迫」スライダーの数値(0–90%)を、「約0%」を含めて常に出力する。「評価不能」と出力されるのはセグメントを評価不能(N)にした場合だけで、Nを付けると症例は評価不能(N)の扱いとなる。「✎ 下書きを編集」で、この数値をSCCT 2026の分類(狭小化なし、50%未満、50%以上)に置き換えるか、単一心位相の撮影であれば「収縮期圧迫は評価不能」という記載に置き換える。 マップで例を開く (CAD-RADS 0/E) →

マップのテンプレート出力(原文のまま)

左前下行枝 (LAD):動脈硬化性病変なし。中間部に心筋ブリッジを認め、壁内走行(深在型)および約55%の収縮期圧迫を伴う。分枝 D1、D2:病変なし。

インプレッション 冠動脈疾患を認めない。CAD-RADSカテゴリー 0/E。

左前下行枝中間部の心筋ブリッジ(修飾子E、外因性圧迫による非動脈硬化性所見):圧迫は動的(収縮期)であり、CAD-RADS 0-5のカテゴリー分類は変更しない。深在型の走行および/または高度な収縮期圧迫は、血行動態的リスクがより高い解剖学的因子であり、臨床症状との対比を要する。他に明らかな原因のない狭心症を認める場合には、機能的評価(CT-FFRまたは負荷試験)の追加を考慮する。

心筋ブリッジを伴うLADの曲面再構成の模式図。拡張期と収縮期を並べ、深さと長さを示す。
図 1. 心筋ブリッジは、動脈を覆う心筋の厚さとトンネル長で計測する。圧迫は収縮期と拡張期を比較すると明らかになり、単一心位相では評価に限界がある。

冠動脈起始異常 Anomalous origin of a coronary artery AAOCA・ALCAPA・ARCAPA#

別名: 冠動脈異常起始, 冠動脈奇形 (より広い概念), 大動脈からの冠動脈起始異常 (AAOCA。肺動脈からの起始は含まない), ACAOS (SCCT 2021が対側のValsalva洞からの起始に用いる略語), ACAPA (ESC 2020が肺動脈からの起始に用いる略語), 左冠動脈肺動脈起始症 (ALCAPA), Bland-White-Garland症候群 (ALCAPAの別名)

冠動脈が通常の部位以外から起始するものを起始異常という。対側の冠動脈洞または無冠動脈洞からの起始、高位・低位・交連部からの起始、肺動脈からの起始がある。

記載例

右冠動脈 (RCA)の起始異常(左冠動脈洞から起始)、動脈間走行。冠動脈に動脈硬化性病変なし。

混同しやすい点: 「冠動脈に動脈硬化性病変なし」と「冠動脈に異常なし」。起始異常は冠動脈の所見であり、CAD-RADS 2.0はこれを修飾子Eで示す。

出典: SCCT 2026、本文、非動脈硬化性冠動脈異常(セクションj);円錐枝は冠動脈解剖の項、p. 12 · “Anomalous origin could be from the opposite or non-coronary sinus of Valsalva or from pulmonary arteries.”

詳細

読影での使い方: 各冠動脈を、軸位断像と大動脈基部の斜位再構成像で入口部から追跡する。SCCT 2026は、起始、形態、走行、内腔径、終末部、および周囲構造との関係を記載するよう推奨している。

注意点: 右冠動脈洞から直接起始する円錐枝を起始異常として記載すること。SCCT 2026は、これを円錐枝の2つの通常の起始部位の1つとしている。

他の文献: SCCT 2021は、対側のValsalva洞からの起始をACAOSと呼ぶ。ESC 2020ガイドラインは、大動脈からの起始異常をAAOCA、肺動脈からの起始をACAPAとし、後者にALCAPAとARCAPAを含める。 (SCCT 2021、セクション4.10、p. 209;ESC 2020、セクション4.17.1)

CCTA Mapでは

「解剖 ▾」の「冠動脈の起始」を開くと、「1本の血管」「左主幹部」「単冠動脈」の3つのタブをもつパネルが表示される。「1本の血管」で「対象血管」(RCA、LM、LAD、LCx)と「起始」(「右洞」「左洞」「PT」)を選ぶ。無冠動脈洞の選択肢はない。マップの仕様上の制約:マップは起始異常による狭小化を狭窄度として評価しない。冠動脈樹のどこにもプラークがなければ、中等度狭窄を伴う動脈間走行の起始異常はCAD-RADS 3/EではなくCAD-RADS 0/Eと出力される。狭小化を病変として描くと、マップはP1を付加し、動脈硬化として記載する。病変としては描かず、「✎ 下書きを編集」で狭窄度とカテゴリーを記入する。どのセグメントにもプラークがなければPは付けない。 マップで例を開く (CAD-RADS 0/E) →

マップのテンプレート出力(原文のまま)

起始・走行:左回旋枝 (LCX)の起始異常、起始部:右冠動脈洞、大動脈後走行。優位性:右優位。

インプレッション 冠動脈疾患を認めない。CAD-RADSカテゴリー 0/E。

良性走行を伴う冠動脈起始異常。大血管間を走行しない。

異常冠動脈の走行 Course of an anomalous coronary artery#

別名: 異常冠動脈の走行形態, 中隔内走行, intraconal course (経中隔走行(肺動脈弁下走行)の別名), 心臓前方走行 (肺動脈前走行の別名)

走行は、異常冠動脈が心基部のどこを通過するかを示す。SCCT 2026は、動脈間走行、大動脈後走行、経中隔走行(肺動脈弁下走行)、肺動脈前走行の4つを挙げる。

記載例

左前下行枝 (LAD)の起始異常(右冠動脈洞から起始)、経中隔走行(肺動脈弁下走行)。

混同しやすい点: 経中隔走行(肺動脈弁下走行)と動脈間走行。前者は肺動脈弁の下方で中隔内を走行し、後者は大動脈基部と肺動脈幹の間を通る。

出典: SCCT 2026、本文、非動脈硬化性冠動脈異常(セクションj)、pp. 20–21 · “Anomalous courses could be interarterial, retroaortic, transseptal (subpulmonic) or prepulmonic”

詳細

読影での使い方: 近位部を軸位断像と斜位像で、本来走行する溝に達するまで追跡する。動脈間走行は高リスクとされ、収縮期には、拡張する大動脈と肺動脈の間で動脈が圧迫される。経中隔走行は、拡張する大動脈と収縮する右室流出路の間にあり、圧迫は少ない。

注意点: 動脈間走行と記載しながら、近位部に狭小化があるのにその狭窄度を評価しないこと。SCCT 2026は内腔径の記載を求めており、CAD-RADS 2.0はこの狭小化の狭窄度でカテゴリーを決め、Eを付ける。中等度狭窄であればCAD-RADS 3/Eとなる。

他の文献: 心臓の後方を通る心臓後方走行を加え、5つの走行を挙げる総説もある。文献上の別名として、経中隔走行には中隔内走行(intraseptal)、肺動脈前走行には心臓前方走行(precardiac)がある。本用語集はSCCT 2026の4分類に従う。 (Genoud 2026、セクション4.1.3;Evangelista 2024;Karatoprak 2026、方法)

CCTA Mapでは

「1本の血管」の「走行」で「動脈間走行」「肺動脈前走行」「大動脈後走行」のいずれかを選ぶ。マップは血管と起始洞に応じて1つを提案する。テンプレートは動脈間走行を高リスク(潜在的悪性)型として、他の2つを良性走行として記載する。経中隔走行の選択肢はなく、大動脈からの起始では3つのうち1つが必ず選ばれた状態になる。経中隔走行は、「✎ 下書きを編集」で走行名とテンプレートのリスクに関する文を書き換えて記載する。 マップで例を開く (CAD-RADS 0/E) →

マップのテンプレート出力(原文のまま)

起始・走行:右冠動脈 (RCA)の起始異常、起始部:左冠動脈洞、動脈間走行。優位性:右優位。

インプレッション 冠動脈疾患を認めない。CAD-RADSカテゴリー 0/E。

動脈間走行を伴う冠動脈起始異常:心筋虚血および心臓突然死のリスクが高い高リスク(潜在的悪性)型。壁内走行、スリット状起始口、鋭角な起始角度、近位部の狭小化などの高リスク所見に注意する。

個別の管理を要する(CAD-RADS対象外):症状と解剖に応じた虚血検査および循環器内科・心臓外科への紹介を検討する。

壁内走行 Intramural course#

別名: 壁内走行区間, 大動脈壁内走行, intramural segment, intramural course (英語)

壁内走行とは、異常冠動脈の近位部のうち、大動脈壁から離れる前に大動脈壁内を走行する部分をいう。動脈間走行のリスクを高める。

記載例

右冠動脈 (RCA)の起始異常(左冠動脈洞から起始)、動脈間走行。鋭角な起始角度、血管短軸像でのスリット状の入口部、大動脈側の冠動脈周囲脂肪の欠如から、壁内走行が示唆される。

混同しやすい点: 異常冠動脈の壁内走行と心筋ブリッジの心筋内走行。前者は起始部近くの大動脈壁内を走る区間、後者は心筋内のトンネル部である。

出典: SCCT 2026、本文、非動脈硬化性冠動脈異常(セクションj)、p. 20 · “An intramural segment is not directly visualized, but can be inferred by an acute takeoff angle, segmental narrowing with a slit-like orifice at cross-section”

詳細

読影での使い方: CTでは直接描出されない。鋭角な起始角度、血管短軸像でスリット状の入口部を伴う分節状の狭小化、大動脈内腔側での冠動脈周囲脂肪による被覆の欠如から推定する。認めた場合はその長さを計測する。

注意点: 血管を斜めに切る軸位断像で近位部内腔の形状を評価すること。スリット状の入口部は血管短軸像で確認する。

他の文献: Angelini分類では、「intramural coronary artery(壁内冠動脈)」は心筋ブリッジの別名である。本用語集ではSCCT 2026と同様に、壁内走行を大動脈壁内を走る異常冠動脈の部分に限定し、心筋ブリッジのトンネル部は心筋内走行と呼ぶ。 (Ganga 2021、表1;Evangelista 2024;Genoud 2026、図5)

CCTA Mapでは

「高リスク所見」で「壁内走行」を選び、「壁内走行長(mm)」に長さを入力する。テンプレートには「壁内走行区間 (~6 mm)」と出力される。この項目は大動脈からの起始でのみ表示される。マップの仕様上の制約:壁内走行区間が内腔を狭小化していても、マップはその狭小化を狭窄度として評価せず、カテゴリーにも反映しない。狭窄度とカテゴリーは「✎ 下書きを編集」で記入する。 マップで例を開く (CAD-RADS 0/E) →

マップのテンプレート出力(原文のまま)

起始・走行:右冠動脈 (RCA)の起始異常、起始部:左冠動脈洞、動脈間走行。優位性:右優位。

インプレッション 冠動脈疾患を認めない。CAD-RADSカテゴリー 0/E。

動脈間走行を伴う冠動脈起始異常:心筋虚血および心臓突然死のリスクが高い高リスク(潜在的悪性)型。壁内走行、スリット状起始口、鋭角な起始角度、近位部の狭小化などの高リスク所見に注意する。

高リスク解剖学的所見を認める:壁内走行区間 (~6 mm)。

個別の管理を要する(CAD-RADS対象外):症状と解剖に応じた虚血検査および循環器内科・心臓外科への紹介を検討する。

起始異常の高リスク解剖 High-risk anatomy of an anomalous coronary artery#

別名: 悪性冠動脈起始異常 (臨床上の呼称で、通常は動脈間走行を指す), 高リスク所見 (マップのパネル見出し)

動脈間走行、壁内走行、スリット状の入口部、鋭角な起始角度、近位部の狭小化、高位起始は、虚血と関連するため高リスクとされる。

記載例

左主幹部 (LMT)の起始異常(右冠動脈洞から起始)、動脈間走行、スリット状の入口部および鋭角な起始角度。

出典: SCCT 2026、本文、非動脈硬化性冠動脈異常(セクションj)、p. 20 · “An interarterial course between the aortic root and pulmonary artery is considered a high-risk anatomy, particularly when combined with an intramural course.”

詳細

読影での使い方: 走行を確定したら、入口部と近位部を血管短軸像で観察する。入口部の形状、起始角度、狭小化の長さ、ST junctionに対する入口部の高さを記載する。

注意点: 左冠動脈洞から起始するRCAと、右冠動脈洞から起始する左冠動脈を同等に扱うこと。ESC 2020は後者をより悪性としている。

他の文献: ESC 2020ガイドラインは、ST junctionより1 cmを超えて上方にある入口部を高リスクとする。ST junctionより上方の入口部をすべて高位起始と呼ぶ著者もおり、SCCT 2026は距離を定めていない。 (ESC 2020、セクション4.17.2および注c;Karatoprak 2026、方法)

CCTA Mapでは

大動脈からの起始では、「高リスク所見」に「スリット状起始部/鋭角な起始」「壁内走行」「高位起始」が表示される。テンプレートはこれらをインプレッションに列挙し、いずれもカテゴリーを変えない。マップの仕様上の制約:近位部の狭小化には入力項目がなく、プラークがなければマップはこれを狭窄度として評価しない。病変として描くと、マップはP1を付加し、動脈硬化として記載する。狭窄度とカテゴリーは「✎ 下書きを編集」で記入し、どのセグメントにもプラークがなければPは付けない。 マップで例を開く (CAD-RADS 0/E) →

マップのテンプレート出力(原文のまま)

起始・走行:左主幹部 (LM)の起始異常、起始部:右冠動脈洞、動脈間走行。優位性:右優位。

インプレッション 冠動脈疾患を認めない。CAD-RADSカテゴリー 0/E。

動脈間走行を伴う冠動脈起始異常:心筋虚血および心臓突然死のリスクが高い高リスク(潜在的悪性)型。壁内走行、スリット状起始口、鋭角な起始角度、近位部の狭小化などの高リスク所見に注意する。

高リスク解剖学的所見を認める:鋭角な起始角度を伴うスリット状狭小な起始部、壁内走行区間 (~10 mm)および高位起始(ST junctionより上方)。

個別の管理を要する(CAD-RADS対象外):症状と解剖に応じた虚血検査および循環器内科・心臓外科への紹介を検討する。

冠動脈瘤と冠動脈拡張症 Coronary artery aneurysm and ectasia CAA・CAE#

別名: 冠動脈拡張, 瘤状拡張

冠動脈瘤は、径が隣接する正常セグメントの1.5倍を超え、血管長の50%未満にとどまる拡張である。それを超えて広がるものは冠動脈拡張症である。

記載例

右冠動脈 (RCA) 近位部に紡錘状冠動脈瘤、最大径7 mm(隣接する正常セグメントは4 mm)。

混同しやすい点: 冠動脈瘤と仮性瘤。仮性瘤は動脈壁の3層構造をもたない限局性の膨隆で、冠動脈インターベンション、手術、感染、外傷、妊娠によって生じる。

出典: SCCT 2026、本文、非動脈硬化性冠動脈異常(セクションj)、p. 22 · “Coronary artery aneurysm is defined as a coronary artery segment with a diameter > 1.5 times the diameter of normal adjacent coronary artery segments or the largest coronary artery”

詳細

読影での使い方: 最大径を血管短軸像で計測し、隣接する正常セグメントまたは最も太い冠動脈の径と比較する。嚢状瘤では横径が長軸方向の径より大きく、紡錘状瘤では長軸方向の径のほうが大きい。

注意点: 血管長の半分を超える拡張を冠動脈瘤と呼ぶこと。このびまん性の拡張は冠動脈拡張症であり、SCCT 2026はその主因を動脈硬化としている。

CCTA Mapでは

マップには冠動脈瘤・冠動脈拡張症の入力項目がない。冠動脈瘤はCAD-RADS 2.0の表3に挙げられているが、マップはEを付加しない。所見は「✎ 下書きを編集」で記入し、冠動脈瘤であればEも手入力する。

修飾子E(例外) Modifier E (exceptions) E#

別名: E修飾子, 例外修飾子, CAD-RADSの例外, modifier E (英語)

修飾子Eは非動脈硬化性の冠動脈所見を示す。CAD-RADSコードの末尾、N、HRP、I、S、Gの後に記載し、カテゴリーを置き換えずに付記する。

記載例

右冠動脈 (RCA)の起始異常(左冠動脈洞から起始)、動脈間走行、近位部に中等度狭窄(50–69%)。冠動脈に動脈硬化性病変なし。CAD-RADSカテゴリー 3/E。

出典: CAD-RADS 2.0、セクション3.3.6(修飾子E:例外)および表3 · “a modifier “E” is used to account for any non-atherosclerotic narrowing of the coronary arteries and should be added at the end of the score as a modifier”

詳細

読影での使い方: CAD-RADS 2.0の表3は網羅的なリストではなく、解離、起始異常、冠動脈瘤または仮性瘤、血管炎、冠動脈瘻、外因性圧迫、動静脈奇形などを含む。非動脈硬化性の狭小化も狭窄度として評価し、中等度狭窄を伴う動脈間走行の起始異常はCAD-RADS 3/Eとなる。

注意点: どのセグメントにもプラークがない起始異常のコードにPを付けること。CAD-RADS 2.0は、プラークのない動脈間走行の起始異常の例でPを省いている。

他の文献: CAD-RADS 1.0の修飾子はN、S、G、Vのみで、非動脈硬化性所見を示すコードはなかった。CAD-RADS 2.0で修飾子IとEが新設され、修飾子V(vulnerable plaque、不安定プラーク)はHRP(高リスクプラーク)に改称された。 (CAD-RADS 1.0、表1、p. 271;CAD-RADS 2.0、セクション3.3および3.3.6)

CCTA Mapでは

マップは、「1本の血管」で設定した起始異常、心筋ブリッジ、単冠動脈に対してEを付加する。その他の例外では、Eを手入力する。マップの仕様上の制約:マップはプラークを伴わない狭小化を狭窄度として評価しない。冠動脈樹のどこにもプラークがなければ、中等度狭窄を伴う動脈間走行の起始異常はCAD-RADS 3/EではなくCAD-RADS 0/Eと出力される。狭小化を病変として描くと、マップはP1を付加し、動脈硬化として記載する。カテゴリーは「✎ 下書きを編集」で修正し、どのセグメントにもプラークがなければPは付けない。 マップで例を開く (CAD-RADS 2/P1/HRP/E) →

マップのテンプレート出力(原文のまま)

起始・走行:左回旋枝 (LCX)の起始異常、起始部:右冠動脈洞、大動脈後走行。優位性:右優位。

左前下行枝 (LAD):近位部:非石灰化プラーク、軽度狭窄(25-49%)、高リスクプラーク所見(低吸収プラークおよび陽性リモデリング)、同血管の他部位に病変なし。分枝 D1、D2:病変なし。

インプレッション 軽度の非閉塞性冠動脈疾患。CAD-RADSカテゴリー 2/P1/HRP/E。

良性走行を伴う冠動脈起始異常。大血管間を走行しない。

非閉塞性病変:左前下行枝 (LAD)。

確認問題

要点を確認するための短い問題である。選択肢を選ぶと解答が表示される。

1RCAが左冠動脈洞から起始し、動脈間走行を示す。近位部では大動脈と肺動脈幹の間での圧迫により中等度狭窄を生じている。どのセグメントにもプラークはない。正しいコードはどれか。

2LAD中間部で30 mmの区間が心筋内を走行し、血管短軸像では厚さ3 mmの心筋層に覆われている。SCCT 2026によるこのブリッジの分類はどれか。

3LADが右冠動脈洞から起始する。近位部は肺動脈弁の下方で心室中隔内を通り、前室間溝で再び心外膜側に現れる。この走行はどれか。

4異常RCAが左冠動脈洞から起始し、動脈間走行を示す。近位部の血管短軸像では内腔が楕円形のスリット状で、起始は鋭角をなし、大動脈側で冠動脈周囲脂肪が欠如している。これらの所見が示唆するものはどれか。

5RCAは全長の80%にわたり径7 mmである。正常径の遠位部は4 mmである。この拡張の分類はどれか。

参考文献

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